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空にとけた夢がさわぐよ

ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから

宇宙のみなしご (角川文庫)

宇宙のみなしご (角川文庫)

「友達のことでなやんだりするのって、学生の特権みたいなとこあるもんね」
「会社くらい変わっても心意気次第でどうにでもなる」
「でも学校はちがうよ。ほかの学校ととりかえようったって、そうはいかないから」
「あとからふりかえるとさ、職場なんて選ぼうと思えばいくつもあったけど、中学校はたったひとつだ。だから貴重だったって」

授業終了にチャイムが鳴って、
笑い声と足音がどたどた、
そして友達が迎えにくる――

「大人も子供もだれだって、一番しんどいときは、ひとりで切り抜けるしかないんだ、って」
「ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから。ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。自分の力できらきら輝いてないと、宇宙の暗闇にのみこまれて消えちゃうんだよ、って」
「でも、ひとりでやってかなきゃならないからこそ、ときどき手をつなぎあえる友達を見つけなさいって、富塚先生、そう言ったんだ。手をつないで、心の休憩ができる友達が必要なんだよ、って」



わたしもお腹が痛くなったときよく保健室で寝てたな。小学生のころ。保健室の先生の顔、今でもはっきりと思い出せる。あの部屋だけ、あの布団の中だけ、違う世界で違う時間が流れていた気がした。起きてもしばらくは現実味がない。夜に地元のお祭りに子どもたちだけで行ったときにもよく「現実味がない〜」って言ってた。体調が悪くて学校に遅刻して行ったときもそう。非日常の空気はちょっと緊張するけどちょっとわくわくする。


あのとき買ってもらう本としてカラフルを選んだ自分にありがとうって言いたい。十年経った今でも変わらずだいすきなこの世界はおかゆのようにやさしい。自分の生きる世界も、自分自身も、そうでありたい。